日曜日の昼間だったと思う。
夏で、かなり暑い日。
都立公園は人もまばらで、
「今日は余裕で飛ばせそうだな」って空気だった。
子どもと一緒に、
よく飛ぶらしいフリスビーを投げてみることにした。
記録がすごく出るらしい。
「俺でもギネス記録いけるんじゃない?」
なんて、ちょっと本気で思っていた。
で、本気で投げた。
フリスビーは、
まっすぐ一直線に伸びていって、
そのまま木の中に吸い込まれた。
くしゃん。
枝が揺れる音がした。
二人で下から見上げた。
登れそうか?
いや、無理だ。
買ったばかりだったから、
正直ちょっとショックだった。
値段が高いわけじゃないけど、
「まじか……5投目だぞ……」って思った。
でもその木、銀杏だった。
「銀杏なら、数ヶ月したら落ち葉が落ちるよな」
そう思って、とりあえず放置することにした。
冬になって、
葉っぱが全部落ちた頃、
家族で見に行った。
……なかった。
なぜか、
サッカーボールだけが木に引っかかっていた。
公園の管理の人にも聞いた。
「私も見に行ったんですけど、なかったですね」
「サッカーボールしかなかったです」
まあ、そんなもんかと思った。
それからしばらくして、
夜ごはんを食べているとき、
子どもがさらっと言った。
「そういえば、フリスビーあるよ」
正直、
「それ、別の人のじゃない?」って思った。
夜だったし、
次の日も仕事で、
そのまま数日忘れていた。
で、この前。
またその公園を通った。
あの木の前あたりで、
子どもがもう一度言った。
「ほら、フリスビーあるよ」
見上げたら、
あった。
少し色褪せた緑のフリスビーが、
冬の銀杏の枝に、ちゃんと刺さっていた。
写真は撮り忘れたけど、
きっとあんな感じだったと思う。
そのあと、
公園の管理窓口に行った。
「後日見てみますね」と管理の人。
翌日、留守電が入っていた。
「もしもし、公園の〇〇と申します。
フリスビーお取りしましたので、
ご都合のよろしい時に取りに来てください。
よろしくお願いします」
すごく丁寧で、柔らかい声だった。
後日、僕は一人で公園に取りに行った。
「どうやって取ったんですか? クレーンでも使ったんですか?」
高枝切りばさみで取ってくれたらしい。
ありがたい。
7ヶ月ぶりに戻ってきたフリスビーは、
少し色褪せていて、砂埃がついていて、
しかも割れていた。
「ああ、やっぱりな」と思った。
でも、芝生に向かって軽く投げてみた。
ビューン。
……おおお。
2投目。
ビューン。
ちょっと飛びすぎて、
知らない家族の方向へ一直線。
頼む、ぶつからないでくれ。
割れてるのに、飛びすぎる。
世界記録は出ないかもしれないけど、
まだ、いけるらしい。
7ヶ月、
銀杏の木に刺さっていたものが、
こんなふうに静かに戻ってくるとは思わなかった。
飛びすぎるくらいのワクワクは、
たまに自然に預けて、
時間が経つと返ってくる。
たぶん、
物事ってだいたい、そんなもんだ。
7ヶ月、屋外熟成モデル。

それでも、飛ぶ。
ちなみに使っているのはこれです🔽
正直、飛びすぎます。
木のない方向へどうぞ。
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