こんにちは、カーム静也です。
2022年3月19日。
実家に帰省していた日。
夕方、公園で幼児の子どもと遊び、帰ろうとしたとき。
財布がなかった。
あの夜、僕は公園を何周もした。
街灯の下でしゃがみ込み、
ベンチの裏を覗き、
アスレチックの下を見て、
砂場まで探した。
完全に迷探偵。
公園管理事務所の窓からジロジロ覗いた。
「あの机の中にあるはずだ」
夜だったから、完全に不審者。
根拠ゼロの確信。
まっくらな受付を、ひたすら見る男。
警察署にも行った。
でも、なかった。
翌朝、オープンに合わせてもう一度管理事務所へ。
やっぱり、なかった。
諦めた。
「カード止めるか…」
実家に戻って、
せめて車の中だけ整えようと思った。
運転席の後ろ。
留め具もつけずに置いてあった、
ただのビニール傘。
何気なく、開いた。
ポトッ。
財布。
犯人は、傘だった。
しかも車内。
なぜそこにいたのか、いまだに謎。
翌日、僕はすぐに買った。
AirTag。
もう、あの夜は繰り返さない。
そして2026年。
別の公園で、
小学生になった子どもがローラー滑り台を何度も滑っている。
あの頃は幼児だった。
今は小学生。
僕はポケットの財布を触る。
ちゃんとある。
AirTag付きで。
2022年3月19日。
あの夜、僕は迷探偵だった。
根拠のない推理で公園をさまよい、
管理事務所を覗き、
警察署まで行った。
犯人は――
車内のビニール傘だった。
でも、あの夜があったから、
今はドキドキする時間が短くなった。
iPhoneに表示される 0.6m。
音が鳴る。
すぐ終わる。
2022年3月19日。
あの夜は、
財布をなくした日じゃない。
迷探偵を卒業した日だった。


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